神奈川県横浜市の大型マンションが施工不良によって傾いていることが発覚した問題で、建築基準法違反の疑いで国土交通省や横浜市が調査に乗り出している。問題のマンションは三井住友建設が施工し、旭化成建材が杭の工事を請け負っているが、建物を支える52本の杭のうち6本が強固な地盤の「支持層」に届いておらず、ほか2本も打ち込まれた長さが不十分だったことが明らかになった。その結果、4棟のうち1棟で傾きが発生、「別棟への渡り廊下の手すりがずれている」という住人の訴えで調査が行われ、建物片側の手すりが2.4センチ、床面が1.5センチ低くなっていたことがわかった。傾いた棟の10本を含め、3棟で計38本の杭の施工記録が、別のデータを転用または加筆したものだったという。「今回の事件に衝撃を受けた」という、榊マンション市場研究所主宰で住宅ジャーナリストの榊淳司氏は、以下のように解説する。「杭は、建物をしっかりとした地盤に食い込ませて安定させる、最も重要な施工箇所のひとつです。その部分でデータを偽装するなどということは常識では考えられず、ずさんな施工といわざるを得ません。旭化成建材が杭工事を行ったマンションは3000棟ともいわれており、全国のマンション住人にとって、この騒動は他人事ではありません。また、マンションの欠陥は露見しにくいという性質があります。被害者である購入者は、自分の住まいの資産価値が損なわれる情報を表に出したがらないからです。売主や管理会社も、いわゆるクレームに対して『あまり騒ぐと、資産価値が落ちますよ』という“脅し文句”で、住人を黙らせるケースが少なくありません。●業界に蔓延する「消費者軽視」の姿勢また、榊氏は「今回の問題で、業界特有の体質が浮き彫りになった」と語る。「今回の問題の本当の原因がどこにあるのか、現時点ではわかりませんが、購入者に対して最終的な責任を負わなければならないのは、売主である三井不動産レジデンシャルでしょう。同社の対応には一部で批判がありますが、問題が発生した時に『なんとか適当にごまかそう』という姿勢は、マンションデベロッパー業界全体に通じるものです。そして、その根底には、『購入者から欠陥などを指摘された際、単なるクレームのように処理してしまう』という業界体質があります。(後略)(Business Journal 10月16日抜粋)
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