■穏やかな死の手助けに
 
 みとりの医療の現場では、既に亡くなっている肉親の姿を見るなどの「お迎え」を体験する患者に日常的に接するという。幻覚や意識障害として片付けられがちだが、これまでに約2500人をみとってきた湘南中央病院(神奈川県藤沢市)在宅診療部長の奥野滋子さんは「周囲の人は頭から否定せずに、亡くなる人との最期の大切なコミュニケーションに生かしてもらえたら」と話す。

 8月に出した著書「『お迎え』されて人は逝く」(ポプラ新書)には、奥野さんが実際に見聞してきた「お迎え」の事例が豊富に紹介されている。「穏やかな死を迎えた人は、『お迎え』を体験している人が多いと感じたことが、この本を書いたきっかけです」と話す。
 奥野さんがおととしみとったある女性が見たのは、幼くして亡くした子どもが大人に成長した姿。自分も見たことがないはずだが、「間違いありません。あの子が来たということは、私の命はもう長くないわね」と、それまで手を付けていなかった身辺整理や遺影の撮影などを積極的に行い、落ち着いた態度で死に臨むようになったという。
 「お迎え」として現れるのは亡くなった肉親が一番多いが、ペット、まだ生きているが会い難い人が姿を見せることもある。「中には、その人が誰だか分からないという場合もあって、最初は不気味に感じていたのに、現れないと寂しくなったり、途中で『ああ、あの人だ』と気付いたりしたケースもありました」

■「お迎え」亡くなる1週間ほど前から
 
 「私がみとった人の少なくとも3分の1は、本人や家族の話から、何らかの形で『お迎え』を体験していたとみています」と奥野さんは語る。「死が近づく不安の中で『大切な人にそばにいてほしい』という気持ちが見せるのかもしれませんが、なぜ多くの人が同じような体験をするのかは全く分かりません」
 
 ただ、不思議な言動をする以外、特に異常な様子が見られなければ、薬物などによる「治療」はすべきではないというのが奥野さんの考えだ。「『お迎え』を見始めるのは、おおむね亡くなる1週間ほど前からです。『お迎え』の兆候が始まったら、周囲の人はそうした言動も受け入れてあげて、残りの貴重な時間を穏やかに大切に共有してほしいと思います」と話している。
 ▼おくの・しげこ 富山市出身。金沢医科大卒業後、順天堂大医学部麻酔科学講座で麻酔と痛みの治療に従事し、2000年から緩和ケア医に転向。13年から湘南中央病院在宅診療部長。

(西日本新聞10月9日)
 

妻が勤めている介護施設でも、たまにこういう話を聞くそうです。

入居しているおばあさんが、さっきまでいたのよ、そこにって。
亡くなった旦那さんと数分話していて「また、今度ゆっくりはなそうね」って消えたそうです。

雨の日の昼間の個室での出来事。

あなたの『お迎え』は、昔飼ってたとかげとか九官鳥ね。
と妻はいいます。



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