世界最古のドレス、5000年前のものと判明

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現存する織物のドレスとしては世界最古の「タルカン・ドレス」。元はひざ下まであったと考えられている。5100年~5500年前の、エジプト初期王朝時代のものだと判明した。(PHOTOGRAPH COURTESY PETRIE MUSEUM OF EGYPTIAN ARCHAEOLOGY, UNIVERSITY COLLEGE LONDON)
 

 20世紀初めにエジプトのある墓地で見つかった麻のドレスが、新たな分析により5000年以上前のものであることがわかった。織物の衣服としては、これまで見つかった中で最古のものだ。縫い方もプリーツの付け方も美しく、当時の社会の繁栄を物語っている。

 「タルカン・ドレス」と呼ばれるこの衣服が発見されたのは奇跡と言っていい。植物の繊維や動物の皮で作られた古代の衣料は、ほとんどが崩れてばらばらになってしまうからだ。今回、ドレスの年代を発表した論文著者の1人で、英国ピートリー・エジプト考古学博物館の学芸員、アリス・スティーブンソン氏は、「一般的に、遺跡から出土する織物に、2000年以上前のものはまずありません」と話す。スティーブンソン氏らの論文は、考古学の学術誌『Antiquity』に掲載された。(参考記事:「先史人類が着た衣服、服装の起源を探る」

 このドレスと近い年代のもので、現代まで残っている衣服は数えるほどしかなく、それも、単に体に巻き付けたり、体を緩やかに覆ったりするものばかりだ。一方、このタルカン・ドレスは、古代のオートクチュールといえる。腕にぴったり添う袖とVネックの首元、幾重もの細かいプリーツがあしらわれたデザインは現代に通じるものがあり、もし百貨店に並んで売られていても違和感はないだろう。

 これほど細部まで手の込んだドレスは、専門の職人でなければ作れなかったはずだ。そうした職人が存在したということは、既に豊かで階層化の進んだ社会ができていたはずだ。事実、5000年前のエジプトには、ちょうど、1人の支配者の下に初めて統一された王朝が登場していた。

 ひじや両脇にあるしわからは、このドレスが単に儀式のために作られたのではなく、実際に着用されていたことがうかがえる。(参考記事:「世界最古の革靴、アルメニアで発見」


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こちらは世界最古のズボン。中国西部にある、3000年ほど前に埋葬された遊牧民の墓で見つかった。乗馬用に考案されたと考えられている。(Photograph by German Archaeological Institute (DAI))

 エジプトの墓地で5000年の間眠っていたタルカン・ドレスは、20世紀初めに考古学者に発見され、ピートリー・エジプト考古学博物館に寄贈された。だが、長年、ほかのぼろ切れと一緒に放置されていたのだ。1977年に遺物保存の専門家が館内の布の束を広げて整理して、このドレスはようやく日の目を見た。「ぼろぼろのシャツのように見えますが、数世紀後の遺跡からは、床に届く丈があるよく似た形のドレスが見つかっています。このドレスも、元はもっと長い丈だったと思われます」とスティーブンソン氏。

 こんなドレスを着られたのは、上流階級の人々だけだっただろう。オーストラリアにあるマッコーリー大学のジェナ・ジョーンズ氏はEメールの取材に対して、「ドレスとほぼ同年代の墓石には、よく似たローブを着た人々が描かれています」と指摘する。また、死後の世界に携えていくものの一覧を表したヒエログリフには、「食物や化粧品とともに、衣装を表す文字も含まれています」と同氏は付け加えた。

 ジョーンズ氏は、「放射性炭素年代測定によってタルカン・ドレスが『最も古い織物の衣服』であることが正式に証明され、とてもうれしく思っています」と語った。(参考記事:「世界最古のコーランを発見、英大学が発表」
 
(NATIONAL GEOGRAPHIC日本版 2月23日;
ソース:http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/a/022200011/






【今日の風景】

久しぶりの古代エジプトニュース。

そういえば高校時代の世界史の先生がすご~く厳しくて、副読本20冊くらい、参考書(確か当時の岩波講座の世界史もありました)いっぱいで次の授業までに例えば、『「王家の谷」に葬られているエジプト王家の関係を原稿用紙10枚までにまとめよ』とか『エジプト新王朝時代とプトレマイオス朝時代の貨幣制度の違いを原稿用紙5枚までにまとめよ』なんていう宿題を普通に出していて、やってこなければ次の夏休みや冬休みの補修出席決定(チケットを買う有料授業)なんてことをしていたのを思い出しました。

そんな彼のおかげで私は、古代中国の歴史が好きになったのですが。 

世界各国の古代史はまだ、分からないことや見つかっていないものが多い分ロマンがあります。

歴史研究も19世紀からの文献中心の研究方法から科学的方法や機材を使った遺跡・遺物解析中心の実証主義的方法にどんどん移行してきています。

そのおかげで1980年代後半から興味深い発見が相次いでいますが、最近では特に特殊な人工衛星(本来は軍事用です)を使った古代遺跡の発見が多くなっています。

文系の学問にしては珍しく、科学的方法を駆使している分野です。

(なお、念の為に申し上げておきますが、私は科学至上主義者ではありません。デカルトやパスカルが言ってるように科学は単なる目の前の事象を分析するための「方法」のひとつに過ぎません。) 

今回の発見にしても分析が進めば、他の遺物と比較して繊維がどこで作られたものか、どういう方法で作られたのかという細かいところもどんどん分かってくるようになると思います。

なかなかに楽しみな分野です。


 



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