被害続出!「成年後見人」弁護士に認知症老人の財産が狙われている

65歳以上の国民の4人に1人、1000万人が認知症と闘うことになる日本。いま、そんな認知症の人々が蓄えた財産を狙う悪徳弁護士が急増している。悪用される「後見人」制度の実情を追う。

勝手にカネを引き出す
 
「何かがおかしいとは、薄々感じていたけど、本当に驚きました。私が見に行くと、山梨にある大伯母の持ち家はボロボロで雑草も伸び放題。玄関を開けると長年閉め切っていたような、カビ臭い空気が噴き出してきました。ネズミか何か小動物でも棲み付いたのか、アンモニア臭が漂う部屋もありました。

ところが、大伯母の成年後見人である弁護士は、この空き家の施設管理や風通しに行くと称して、同僚弁護士とレンタカーを借り、その経費を大伯母の口座から何度も引き出しているんです。その総額は、100万円や200万円ではきかないと思います」

埼玉県内のグループホームに入所している田村千鶴子さん(87歳・仮名)の親族の女性はこう憤る。怒りの矛先は、千鶴子さんの「成年後見人」である弁護士だ。

千鶴子さんは、埼玉県内の自宅の他、山梨県にも前述の一戸建て住宅を持ち、不動産を中心に億単位の資産がある。夫と息子に先立たれ、独り身となった千鶴子さん。認知症を患い、財産の管理が難しいことから、親族が家庭裁判所に成年後見人の申請を行った。

認知症やその他の病、重度の障害などで、財産の管理が難しい人に対して、本人に代わって資産を管理し、介護契約などを始め、必要な契約や財産の処分を行って人生の最終盤を補佐するのが、「成年後見人」だ。

千鶴子さんの場合、家庭裁判所が、成年後見人の経験を持つ弁護士を選任した。親族の女性が続ける。

「公の裁判所が選んだ地元の弁護士さんということで、最初は安心していました。ところが、山梨の物件のご近所に住む知人から、『おたくの親戚の家がひどいことになっている』と電話がかかってきた。そんなはずはないと思いつつ見に行ったら、このありさまです。

弁護士には、大伯母の財産から毎月約5万円の報酬が支払われているんです。そして、レンタカーで山梨に行っているのは本当の様子。山梨まで足しげく通って、一体、何をしているのか。大伯母のカネで温泉通いでもしているんじゃないんでしょうか……」

2000年に日本で成年後見制度が始まって15年。高齢化社会を見越して、認知症などを抱えた人が最期まで安心して暮らせる社会を目指すという、高い理想を掲げて始まった制度だ。だが、いまその仕組みを悪用して認知症患者の財産を搾取する悪質な弁護士、司法書士などが続出。トラブルが急増している。

神奈川県で独り暮らしをしていた山本孝男さん(72歳・仮名)は、脳梗塞で倒れ、脳血管性認知症を発症。施設に入った。山本さんの姪・浩子さん(仮名)は、自分が成年後見人になるつもりで家庭裁判所への申し立てを行った。ところが家裁は、なぜか浩子さんではなく、縁もゆかりもない弁護士を成年後見人に選任した。浩子さんが話す。

「孝男叔父さんは、すでに私が住む東北地方の施設に引っ越しているんです。神奈川の弁護士が、いちいち東北まで様子を見に来るなんて物理的に不可能でしょう?施設の人に尋ねたら、普通は転居先の弁護士なりに交代するものなんだそうです。

それなのに、その弁護士は『自分は裁判所が選んだ人間だ』と、いくら頼んでも辞任しようとしないんです。結局、東北には一度も来ていないのに、毎月4万円ほどの報酬が、自動的に引き落とされている状況です」

5000万円を横領
 
元東大医学系研究科特任助教で、一般社団法人「後見の杜」代表の宮内康二氏はこう話す。

「家庭裁判所が選任した成年後見人は、認知症高齢者にとって『もう一人の自分』と言えるほど、強力な法的権限を持ちます。たとえ被後見人である認知症高齢者のためであっても、後見人の同意なしには親族が被後見人の財産を使うことはできません。さらには、後見人が『ダメだ』と言えば、被後見人本人でさえ、自分が蓄えた財産を1円たりとも使えないのです」

こうした強力な権限を持つ後見人に就くのは、かつては被後見人の近しい親族がほとんどだった。しかし、とくに子供が後見人になった際、「いずれは自分が相続する財産だ」と好き勝手に使い込むケースが続出。裁判所はこれを警戒し、12年以降は親族以外の弁護士や司法書士といった「専門職後見人」を選任することが多くなった。現在では新たに選ばれる成年後見人の過半数が専門職後見人となっている。

ところが今度は、裁判所に選任された権威を盾に、違法すれすれの巧みな言い訳を重ねて認知症高齢者の財産を食い物にする後見人が急増することになってしまった。

実際、直近の事件だけを見ても、12月4日に愛媛県の松山地裁で、約2200万円を着服した弁護士が懲役3年、執行猶予5年の有罪判決を受けた。この弁護士は松山家裁が選任した専門職後見人だったが、領収書などを偽造し、被後見人のための支出を装って家裁への報告書類を提出していた。

また12月7日には東京地検特捜部が、死亡当時103歳だった千葉県在住の女性の口座から約6745万円を不正に引き出し着服したとして、元司法書士の成年後見人を起訴している。

あとを絶たない事件。その闇の深さは、業界団体の苦慮する様子からも窺い知ることができる。今年3月、司法書士で構成する公益社団法人「成年後見センター・リーガルサポート」が、こんな文書を公表した。〈会員の不祥事を受けての再発防止策について〉。その書き出しは悲愴感漂うものだ。

〈今般、当法人の会員が被後見人の財産から横領する事件が複数発生した……〉

たとえば、こんなケースが報告されている。岡山県支部の司法書士は「事務所の経営不振や土地購入で資金繰りに困り、資金穴埋めのため」5000万円を横領。徳島県支部では被後見人の「定期預金を数百万円単位で次々と解約」、「事務所経費、ギャンブル(競艇)、遊興費等に流用」していた司法書士がいたという。

家を売り飛ばされた!
 
 さらに、こうした明らかな流用や着服でなくとも、成年後見制度を食い物にする悪質な弁護士や司法書士が多数、存在する。前出の宮内氏のもとには、こんな相談が寄せられているという。

「ある独り暮らしの認知症高齢者を担当しているケアマネジャーから相談を受けたのですが、その方の自宅には、何匹もネズミが出ている。本人は身体も不自由なので、大変怖がっているけれども、ケアマネが後見人の弁護士に連絡すると、『ネズミの駆除は、法的には〈居住用不動産の処分〉に当たるので、家裁の許可が必要で時間がかかる』と言い張って、何もしようとしない。本当に何もできないのかとケアマネは不審に思い、私たちの団体に相談してきたのです」

実際は、〈居住用不動産の処分〉とは売却や貸し出し、リフォームなどの大規模修繕を指し、ネズミの駆除は該当しない。裁判所の許可など必要ないのだが、この弁護士にとって被後見人は「何もしないで毎月報酬が入るカネヅル」に過ぎないため、放置していたのだ。

「この方は現在も、ネズミに怯えて生活しています」(宮内氏)

認知症の被後見人や親族の気持ちなど何も考えずに、カネのためだけに財産を処分してしまう後見人もあとを絶たない。神奈川県在住の豊橋光江さん(68歳・仮名)は、涙ながらにこう語った。

「認知症の父を長年、自宅で介護してきたのですが、ある日、地域の包括支援センターの人から『お父さんは財産管理の能力が、そろそろ不安になってきていますから、成年後見人をつけたらどうですか』と言われたんです。よくわからないまま、センターから紹介された弁護士に頼んで、家裁に申し立てをしました。私は自分が父親の後見人になれるものと思っていたのですが、家裁は手続きを依頼した弁護士を後見人に選んでしまったんです。

すると、弁護士はいつの間にか父と私が住んでいる自宅を売却して、父親を老人ホームに入れることを決めてしまいました。私はこれまで通り、自宅で父の面倒を見たい、家を売られたら住むところがなくなると抵抗したんですが、法的には後見人のほうが強いということで、私は追い出されるようにアパートに引っ越し、父は家族が選んだわけでもない施設に入居することになりました。後見申し立てなんてしなければよかった……」

しゃぶれるだけしゃぶる
 
なぜ弁護士は無理やり家を売ったのか。ある家裁関係者は、こう明かす。

「専門職後見人が、高齢者名義の居住用不動産を高齢者が生きている間に売却すると、売却収入から1件あたり平均100万円程度のボーナス報酬が支払われるんです。家裁では一般的に、認知症の高齢者は自宅ではなく特養などの施設に入るのが幸せだとする空気があって、裁判所の側から売却に異を唱えることはまずありませんね」

このように認知症などの被後見人の不動産を処分する申請は年間約7000件、家裁に提出されている。その9割以上が申請通り認められ、取り下げ分を除くと、却下は年間でたったの10件ほどだと、前出の宮内氏は話す。

「後見人が横領などの不正行為をした場合には、本人や親族が家裁に解任請求を出すことができます。しかし、たとえば『後見人が何も仕事をしない』というだけでは解任が認められることは、まずありません。そうした実情もあり、解任件数は法定後見人全体の1%に過ぎないのです。

一方、辞任件数はこのところ急増しており、昨年は全体の8%、6000件超に達しました。悪質な後見人に対して、本人や親族の不満が爆発し、解任請求が提出されそうな状況になると、後見人が先手を打って、あれこれ理由をつけて家裁に辞任を申請している結果だと考えられます」

認知症高齢者の財産をしゃぶれるだけしゃぶって、悪事が露見しそうになるとさっさと逃げる。どこまでも悪質な弁護士や司法書士が、それだけ多いということだ。食い物にされないためには、どうしたらよいのか。

どうしても後見人が必要だという人は、実は少数です。まず本当に後見人が必要なのか、銀行などとも相談して、認知症であってもできることとできないことを、よく仕分けするとよいでしょう」(前出・宮内氏)

もし、すでに裁判所が選んだ専門職後見人がついている場合には、後見人が家裁に提出している書類を閲覧すると、不審な点がないか確認できる。あまりに後見人の対応がひどいときは、家裁に対し、『後見人を監督してほしい』という監督処分請求も可能だ。ちなみに、この請求は無料で済む。

また、家裁に後見人の解任請求を出す場合も、費用は800円と負担は少ない。ただし、その際は事前に、信頼できる後任の後見人を見つけておこう。そうでないと、また裁判所が選任した見ず知らずの専門職後見人が後を引き継ぎ、同じことの繰り返しになってしまう恐れがある。

認知症をはじめ、高齢にともなう、さまざまな病気や障害。いざ、その時になってから悪質な弁護士や司法書士に立ち向かうには、大変な労力がいる。人生のエンディングを穏やかに迎えるためにも、いまのうちから自分や家族はどうするか、考えておいたほうがいい。


(「週刊現代」抜粋12月26日;






【今日の風景】 

すごいはなしです。

苦労して子供を育てて、なんとか老後のための多少の蓄えも出来てやれやれと思っても、こういう輩がいると安心して病の床に就くこともできない。

だからといって子供もあんまり当てに出来ない。

これで夫婦仲が悪けりゃ最悪です。

独居老人が増えるわけです。

まあ、私みたいな財産もなにもない方が返って気楽なのかも知れません。

それにしても悪いことをする人間は必ず、地獄にゆくと大昔から決まってます。


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※画像はフリーを使用しています。

他人のふんどしで相撲を取ることばっかり考えてると、『弥勒菩薩』が迎えに来るまで地獄にいることになりますよ。

ちなみにそのお迎えは、五十六億七千年先だそうです。



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